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東京支部 第55回 東京ごきそサロン報告


 第55回東京ごきそサロンが、6月10日(水)18時から八重洲倶楽部で「生物に学ぶ驚異のナノテク-現代生活に役立つ生物機能の事例紹介とその応用の現状-」をテーマに開かれました。出席者は、会議室定員超過気味の、過去8回の最多に並ぶ42名でした。
 講師は、ナノファイバー学会副会長・東京工業大学特任教授のD44卒 川口 武行氏で、超省エネ移動機能・持続可能なエネルギー創世機能などの生体機能が、ナノテクノロジーやバイオテクノロジーを介して現実的なモノ作りにどのように活かされてきているかを例示いただきながら、今後の持続可能なモノ作りの有り方について、分りやすく、面白くお話をしていだだました。
【講義内容】ナノテクノロジーを駆使した、新世代(2000年以降)バイオミメティックス(生体模倣技術)材料研究の成功例として、接着材を使わずカーボンナノチューブを利用した繰返し使用可能な「ヤモリ型粘着テープ」等がある。バイオミメティックスと呼ばれる研究が今、新たな成長分野として熱い期待を集めている。生物や植物は、①最小限エネルギーで効率的に働く、②常温・常圧の環境の下で、複雑な形状・機能のモノ作りをしている、③環境に大きな負担を掛けない。このことは、生体(自然界)が、新しいものづくりのヒントを数多く潜んでいることを示しているが、人類はその10%も生かしていない。生体模倣材料の研究開発のこれまでの流れを見ると、①黎明期の1960-90年はバイオミミクリー(生体模倣)の進展で、わずかな実用化例の実現、②1990年代はバイオケミストリー・ナノテクの進展で、ファインケミカルズとして一部実用化、③2000年以降は環境負荷の少ない原材料で生体に似た機能の発現の新潮流で、欧米での研究に比べて、日本の研究はかなり遅れているのが現状である。

 生体機能模倣材料の研究の領域での、ナノ構造と機能発現の関係解明は未踏革新の宝庫であり、多岐にわたる多くの具体例を紹介して、講義を終えた。下記に具体例の一部を例示する。
1.生物の先端モノ作り技術
 世界一タフな糸:クモの糸⇒一般的繊維は、強度が高いものは伸度が低い、伸度が高いものは強度が低いが、天然のクモの糸は強くて伸びる。世界があきらめた状況の人工のクモの糸を、ベンチャーのスパイバー社がトヨタの系列会社と共同開発した。このことは、まさに環境対応と超高機能を両立する新世紀の日本のモノ作りの姿である。
2.生物の省エネプロセス
 昆虫の省エネ移動:キリギリスの足裏構造(蜂の巣構造-摩擦力低い)⇒自動車・飛行機のタイヤ
3.生体防御・種の保存関連技術
 表面撥水・防汚機能:ハスの葉の撥水⇒布の撥水加工、カタツムリの殻(防汚)⇒汚れにくいタイル 
4.持続可能なエネルギー利用・創出
 化石燃料を使用しない冷暖房:シロアリの巣(巣の中30℃前後)⇒超省エネ空調ビル(ジンバブエ) 
5.情報信号伝達・処理システム技術
 圧力センサー:コオロギの気流センサー⇒MEMSセンサー
 その後、食事をとりながらの質疑応答に入った。特に、世界があきらめた状況(青色LED開発に似ている?)の人工のクモの糸に、多くの質問が発せられた。今回の講義内容は、写真・図等で具体的に説明していただき大変分かりやすく、参加者全員が楽しく聴講することができたと思います。最後に、講師の言葉「これでもできる>これしかできない」が、筆者には印象的であったことを付け加えておきます。
                                    記:福間 洋二(M49)

講義中

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講師

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質疑応答

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