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下手の横好き


著者:トヨタT&S建設株式会社 代表取締役社長 小山 裕康(A54、院A56)

 

 皆さん其々色々な趣味をお持ちのことと思いますが、私は人から「趣味は?」と聞かれると「油絵」と答えています。大概の人から「いい趣味ですね」とか「高尚ですね」と褒めて頂き、その場に私の描いた絵がないため、実際より高いレベルのことを想像してもらっています。それだけで私の評価を少し高めてもらえるので得をしています。本当は表題のように「下手の横好き」なのですが。
 なぜ趣味が油絵かというと、元来絵を描くことが好きだったものの、誰かに習ったことも油絵を描いたこともなく、定年になったら始めてみようかと漠然と考えていました。ところが、今から16年前(43才の頃)の同級会で、現在名古屋市に勤務している二村君から「今、油絵を習っている。年取ってから始めてはうまくならない、君も一緒にやらないか?」と勧められ、一人ではなく友人と一緒ならと思い、一念発起して始めることにしました。先生は長久手在住の画家赤塚一三さん。年令も同じで気さくなた
め、非常にスムーズに教室に入ることができました。教え方も描き方の技術を押し付けるわけではなく、その人の個性を尊重しながらアドバイスをしてくれます。そのため描くことがとても楽しく、ストレスも解消でき、思い切って一歩足を踏み出して良かったと大満足でした。
 その後、きっかけづくりをしてくれた二村君は仕事が忙しくなり休眠状態に。私も平均すれば月に一度行けるかどうかの状態で、年に2~3作品を完成させるペースです。それでも描いている時間は絵に没頭でき、教室に来ている皆さんとも仲良くなり、とても大切な時間となっています。そして、絵が完成すれば一端の画家気取りになり、一人で悦に入っています。仕事以外に集中できることを探すのは、多忙な時にはハードル高いことですが、あまり年を取らないうちに少しずつ始めるのはスキルを伸ばして
いくためには大変重要なことだと思います。私の場合は「下手の横好き」で、思うようには全く描けませんが、それでも始めた頃に比べると少しは上達しています。もし今から始めるとするとさらにハードルが高くなって、なかなか重い腰が上がらないかもしれませんし、且つ上達することも難しいのではないかと思います。

 そんな調子で自己満足的な絵を描いていたところに転機が訪れました。同じ教室の二人の方から3人でグループ展をしませんかと問いかけがあり、あまり何も考えもせず「いいですよ」と答えてしまいました。それからが大変で約1年かけて8点の絵を展示するために四苦八苦でした。元々年に2~3点しか描いていないため、未発表の作品と合わせて何とか間に合わすことができました。しかし、これまでは一人よがりのレベルであったのが、人様に見てもらい批評を受けるとなると、自分の稚拙さが浮き彫りになり、改めて鑑賞に堪えうる絵にしなければという気持ちになりました。それからは絵画展や他人の絵を観たりする時には、構図はどうか、色彩のバランスはどうか等を気にしながら、自分自身の描き方の参考にするようになりました。 絵の教室で皆さんと話すことの一つを紹介します。小学生くらいの頃は、歌うのが好きとか、絵を描くことが好きとか、機械いじりが好きとか、あるいはサッカーが好きとか、好きなものに時を忘れて集中したりして、それが楽しかったのですが、高学年になるに従って、所謂受験科目にないものは忘れ去られ、学校でも教えなくなります。折角あるものに才能があっても無理やり抑えられることで、目が出ることがなかったり、本当にやりたいことができなかったりします。現在の教育制度には偏りがあり、同質人間を生み出すことになってはしないかと危機感を感じています。もっと本来備えている才能を伸ばすことのできる環境づくりに力を入れるべきではないでしょうか。若いうちに様々な経験をさせ、自分の好きなことは何か、何が得意なのか、そしてそれを見つけ出し、その上で自分の進むべき道を究めていく、それから勉強しても決して遅くはないでしょう。そうすれば若くして鬱に悩む人たちも減少し、さらには創造性豊かな人たちも増えて、将来も明るくなるのではないか。そんなことを話したりしています。
 もう一つ油絵の教室に通っていて良いのは、様々な方々と交流の出来ることです。人生の先輩達は勿論、美術大学を受験する高校学生や中学生もいます。通常の会社や学校に馴染めず絵を通して自分の存在を求めている人もいます。それに画家の方たちとも知り合いになれます。まさに異業種交流です。絵の話を中心に芸術全般や人生についてなど面白い話が飛び交います。仕事の関係では得られない貴重な文化交流になっており、自分自身の幅を広げるいい機会となっています。実は、私にはもう一つ30年以上続けている趣味があります。それはサッカーです。こちらも油絵と同じ様に仕事以外に熱中できる私の大きな宝となっています。こちらも「生涯現役」を目指して頑張っています。ただ両方なかなか時間が取れないのが悩みです。
 会社生活をしているといつも時間に追われ、休みになるとその反動でダラダラとしてしまいがちです。特に私のようなアラカンと言われる年令になると仕事以外に熱中できるものを持っていないと、定年後に気の抜けた粗大ごみになりかねません。皆さんも思い切って、昔からやってみたかったことを今から始めてみませんか?きっと充実した時間と、新たな世界に目覚めるのではないかと思います。そう言う私も十分に絵を描く時間もなく、偉そうなことを言えませんが、いつか「下手の横好き」から「好きこそものの上手なれ」と言われるようになればと、これからもずっと続けていこうと思っています。

 

~「赤い布と静物」(2012年)~

~「赤い布と静物」(2012年)~

 

~「プティット・フランスの橋」(2013年)~

~「プティット・フランスの橋」(2013年)~

 

~「3人展」の様子(2013年)長久手市 文化の家にて~

~「3人展」の様子(2013年)長久手市 文化の家にて~