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国際標準化活動


■著者:東芝シュネデール・インバータ 横井 修(E57)

 

 筆者がI E C( 国際電気標準会議:International Electrotechnical Commission)における国際標準化活動の仕事に携わるようになったのは、2011年5月です。既に4年が経過し、この活動を通じて、感じたこと、学んだことを紹介します。

IECの標準化活動

 IECには、97のTC(Technical Committee)と呼ばれる技術専門委員会があり、TCによっては、その傘下にSC(Sub Committee)と呼ばれる分科委員会が設けられ、現在74のSCが活動しています。これらの委員会は、関係する技術分野における標準化活動を行っています。筆者は、現在TC22(パワーエレクトロニクス機器) パワエレ機器の安全規格改正グループTC22傘下のSC22G(可変速駆動システム) 可変速駆動システムの安全規格改正グループの2グループにエキスパート委員として、可変速駆動システムの効率規格策定グループに幹事として日本側を代表して活動しています。
 上記のような作業グループは、最低5ヶ国以上の国よりエキスパートと呼ばれる代表者が参加し、年2~3回国際会議を開催して、規格策定、改正作業を行います。会場は、欧州参加国が多数を占めることから、欧州→北米→欧州→アジアの順で行われることが多いです。参加者は、グループによりますが、10 ~ 20名ほどが集まり、3~5日間審議を行います。国際会議で、十分審議できない場合には、次回会議までの間に2時間程度のWeb会議を複数回開催して、審議を行うこともあります。時差の関係も
あり、こちらも3地域が同時で参加できる時間帯は限られます。こちらについても公平に深夜、早朝、昼となるよう順番に回して行くことが多いです。

写真1. 会議風景

写真1. 会議風景

 

活動での体験
 エキスパートは、技術的経験・知識が豊富な電機メーカ、試験機関、大学の技術者、研究者であり、中には様々な規格にも精通した方も見えます。このため、会議では、関連規格の番号を引合いに審議がなされることが多くあります。筆者が初めて会議に参加した時は、その関連規格を知らないため、その内容を調べているだけで、審議を終えてしまい、また新たな番号を聞けばそれを調べるといった感じで、審議内容に踏み込めない場面がありました。会議後、参加エキスパートに話をすると、「最初はそんなものだ。」と言われ、少し安心した気になったことを覚えています。それを過ぎると、次の関門は、個々の規格で述べられている要求事項の内容ではなく、その裏の成り立ち、背景、思想を知る必要があります。これについては、いろいろな人から情報を得ながら、知識を蓄えて行く必要があります。中には、参加国が有利になるような政治的な臭いがしそうなものもあります。
 筆者が参加している“可変速駆動システムの効率規格”は、欧州規格(EN規格)が既に出来上がっており、日本は遅れています。国際規格も先行する欧州規格をベースに作られて行くことになることが予想されます。このため、中立的な立場で意見を出せる、欧州以外の国から委員長および幹事を出すことで、公平性を保とうとし、筆者が幹事として選出された訳です。ちなみに委員長は米国の方です。委員長と話をしていくと、20年以上前に、弊社(当時東芝)が彼の会社にOEM供給していた時の製品担当
者であることを知りました。その製品の開発を担当していたのは筆者で、そのことを伝えた時点で、完全に意気投合。お互いSam(筆者)、Timと呼び合い、日米連合で、欧州勢に向かって行けることをお互い確信しています。正に“世界は狭い”を実感した時でした。
 会議では、技術論争をすることがあります。参加エキスパートはそれなりの経験を持っているので、議論が白熱することがあります。そんな時、委員長が妥協案を提示したり、お互いに宿題を託したりと調整をとっていきます。時には、多数決で方針を決めることがあります。
 会議では、約2時間に1回15分程度のコーヒーブレーク(いわゆる休憩時間)が設けられます。この時には、世間話をする人、メールチェックする人など様々ですが、決を採る時の前の休憩では、ロビー活動をする人も出てきます。
 技術論争で最後に物を言うのは、実験データです。筆者が幹事を務める“可変速駆動システムの効率規格”では、日本で一般的な測定方法が、規格に記載されない可能性がありました。最初の会議で、反論しましたが、誤差が大きいと言われ、データが無かったので、言い返せませんでした。欧米の測定方法に従うと、測定器を新たに追加購入するか、欧米の測定器メーカの計測器に買い替えて使用する必要が生じてしまいます。このため、日本電機工業会(JEMA)および日本電気計測器工業会(JEMIMA)に
加入しているメーカ合同で、オールジャパンとして、効率測定を行ってデータを揃えました。そのデータをまとめて、日本の一般的な測定法が、欧米で一般的な測定法と遜色ないことを次の会議で示しました。その結果、欧米の委員も日本の方法を認めてくれ、不利にならないようにすることができました。

写真2. JEMA、JEMIMA共同可変速駆動システムの効率測定風景

写真2. JEMA、JEMIMA共同可変速駆動システムの効率測定風景

会議後の活動
 会議後の夕食は、皆ですることが多いです。参加委員は、真面目な方が多いですが、この時は、会議を忘れてもっぱら世間話です。スポーツ、料理、最近話題となったニュースなどで話が盛り上がります。
 こういった場で、参加メンバーと親しくなって行くと、会議での話し合いもスムーズにできることがあります。
 会議に参加して、知り合った委員達から感じた各国の印象は、こんな感じです。

写真3. 夕食(左より、ドイツ、フィンランド、筆者、デンマーク、カナダ、米国からの参加者)

写真3. 夕食(左より、ドイツ、フィンランド、筆者、デンマーク、カナダ、米国からの参加者)

 アメリカ人:よくしゃべります。話好きで、口が休まることがありません。
 カナダ人:お隣のアメリカと比較するとおとなしいです。(北に位置し、気温が低い。アメリカに比べ人口密度が低いからでしょうか?)
 フランス人:話好きです。時間にルーズと言われていますが、筆者と付き合いのある委員はそんなことはありません。(国際会議なので、合わせているのかも知れません。)
 ドイツ人:イメージ通りで、おとなしく、時間・約束を守ります。
 デンマーク人:ドイツ人に似たところがあります。ドイツ人に比べ、気配りします。
 フィンランド人:おとなしいですが、好意的な話をします。
 スイス人:頑固で、自分の主張を通そうとしますが、周りに気を配ってくれます。
 オーストラリア人:大雑把のイメージがありますが、細かいことに自分が納得するまでこだわります。
 人それぞれなので、一般に言われているイメージに合っていない部分もありますが、ところどころ、お国柄が見えて、面白いです。


おわりに
 最近ISO、IECといった国際標準化の重要性が、認識されるようになってきました。グローバル化と言われる中で、日本がものづくりにだけ徹していても国際標準抜きでは、市場競争で優位に立ち、市場を獲得することは困難になりつつあります。このためにも、国際会議の場で日本が不利にならないよう、意見を述べて行くことは、非常に重要となって来ています。また、国際会議に参加することで、各国の方と知り合いになる機会も生まれます。本稿が国際標準化活動に興味を持たれ、参加のきっかけに
なれば幸いです。

 

 

顔写真 横井様

 横井 修 氏(E57)

略歴
1984年3月 名古屋工業大学大学院電気工学専攻修了
1984年4月 株式会社 東芝 入社
1996年2月 東芝インターナショナル米国社(ヒューストン)へ出向
2000年5月 帰国 東芝産業機器製造株式会社勤務
2001年4月 東芝シュネデール・インバータ株式会社勤務
現在に至る